設立趣意書

2001年9月30日の設立総会に寄せた文章

  • 設立総会に寄せて(和久 貴子)
  • 設立にあたって(谷 雅子)
  • ワークレッシュの設立おめでとうございます(大阪府立大学 社会福祉学部教授 泉 千勢)

設立総会に寄せて

透明なガラスも、太陽の光を眩しく映し、熱をもつことができます。

「とき」の線路から滑り落ちそうな時、「今」の続きである「今」に私をつないだのは、その時全く無力だった私自身の力ではありませんでした。

自分の生の大切さをわかっている人は幸せです。そしてその幸せは、きっと人を救います。

私たちの周囲には、常に様々な条件や状況が取り巻き、そのそれぞれが複雑な問題を孕んでいます。時には突然、または無意識のうちに自分が渦中にいることもあります。

生活の中にある様々な困難に対応していくためには、まず私たち一人一人が現状を見つめ直し、“気づき”に対して声を上げていく力をつけていくこと、それから、みんなの権利と安全を守り育て合うためのコミュニティーを形成することが大切です。人は一人で育つことは出来ないし、また、一人で人を育てることも出来ません。みんなが育て育ち合って、ようやくひとは一人で立つことが出来るのでしょう。

昨年の秋、ワークレッシュ・プロジェクトを起ち上げました。

与えられた自分の生に責任を持って生きたい、できれば心豊かに。初めは個人的な思いからでした。まさしく前述の“渦中”にあるとき、孤独な決心でした。

そんな私にとって、プロジェクトの仕事と言えば、殆どが「人と出会うこと」でした。

それぞれの人が生きてきた道程は、その人たった一人のものです。また、人と人が出会うことが出来るのも、たった一瞬の時の重なり合いです。

しかし、その一瞬間のエネルギーの積み重ねが、揺るぎない力になりました。

こうして集まった私たちの社会への取り組み方、生きる原動力の根底にあるものは、人間に対する温かいまなざしと、自らの生、全ての生そのものへの尊厳です。

本来一人一人は、一個の揺るぎない人格であり、その権利は各人の自主自立によって、生きる上で自由に選択権を持つべきである、という考えです。そのことが理解されていなかったり、守られていないとき、私たちは「人が自ら生きること」のために努力したいと思います。

この度、特定非営利活動法人ワークレッシュ設立総会開催の運びとなり、ますます身の引き締まる思いがいたします。

これまで多くの方々に、温かいご支援とご理解を頂いて参りました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

これからは、より多くの方々との協働によって、このまちと子どもたちとともにワークレッシュが成長していくことを願い、尽力して参りたいと存じます。

今後ともお力添えを頂きたく、皆様方のご参加を心よりお待ち申し上げます。

2001年9月30日
和久 貴子

設立にあたって

私たちは、1996年より公共施設での保育活動をしてまいりました。質の高い保育をめざして1999年にキッズクラブを設立し、各種福祉活動にも参加を求められるようになっております。

2001年3月にワークレッシュ・プロジェクトとの協働により、活動の幅が広がりつつあります。

核家族、少子化など子どもたちをとりまく環境の変化、子育てのさまざまな問題が起こりつつある今、地域力低下による親子の孤立を避け、気軽に集える場を開放し、情報提供、より多くの人との関わり、そして、なによりも親がほっとして、自由な場と時間を過ごせる“集いの場”を中心とした、親のためのサポート事業が必要と考えています。

そして、親自身が自信を持って、楽しく子どもを育てていけるように援助していくことが、大切だと思っています。

その他にも安心して預けられる一時保育事業、働く親のための夜間型学童保育の実現など、子育てしやすい環境、そしてお互いに支えあい安心して暮らせる地域・ネットワークづくりを目指しています。

私たちは、未来を翔ける子どもたちがのびのび暮らせる町、よい環境がいつまでも続くことを願っています。

平成13年9月30日
キッズクラブ代表 谷 雅子

ワークレッシュの設立おめでとうございます

この度、大阪狭山市に「特定非営利活動法人ワークレッシュ」が開設される運びとなりましたことを心よりお慶び申し上げます。

経済的に豊かになったといわれる現代社会は、都市化と核家族化、男女平等と女性の社会参画、少子高齢化の進行で、家庭の中の家族のつながり、家庭と地域のつながり、人々相互のつながりが、ここ20~30年の間に一層脆弱化してしまいました。

人間関係の希薄化は、弱者に顕著にその影響を及ぼします。ひとり暮らしの高齢者、障碍をもった人たちの生活は、人々の支えがなければ大きな困難をかかえます。さらに、元々ひとりでは生きていけない子どもたちは、親や家族の生活困難を直に影響を受けてしまいます。戦後生まれの私たちが育った環境は、まだ地域に支え合う関係がありました。家庭の中にも兄弟姉妹が多くいて、親が家事や仕事に忙しくしていても、子ども同士でお互いに面倒をみていましたし、近所づきあいも開放的で、子どもも大人も相互の家を行き来して、とてもにぎやかな毎日でした。路地の遊びや共同の祝い事を通して、幼い頃から地域共同体感情のようなものも育っていました。地域の誰もが、懐かしい「ふるさと」の情景を心の中にもっていたのです。

ところが、今の子どもたちはどうでしょうか。誰かが意識的に、みんなが集える場を提供しない限り、友達と一緒に何か楽しい経験をすることはほとんど不可能な状況です。子どもはひとりぼっちでは楽しくありません。仲間と遊んだり、何かを一緒に作ったり、たまにはけんかをしながら、原体験を心に刻んで育っていくのです。「心のふるさと」をもたない子どもは大人になってもさみしいです。

有志で始まったワークレッシュが、地域の子どもたちの集いの拠点となることを願って、私も心からその活動を応援します。

大阪府立大学 社会福祉学部教授 泉 千勢